ちゆまど―世界は全て君のために―
(二)
村には十分程度でついた。
「わあ、なんか私がいた村を思い出しますね」
「そうだね。質素ながらのどかだ」
木の家がぽつりぽつりとあって、露店が並ぶ。
活気はないが、人が歩いているだけで良しとしよう。
「宿屋、どこでしょう」
「さあ、とりあえず、大きめの建物探そうか」
りんごどうだい、と言われてつい足を止めてしまった。
オレンジも美味しそう。
「おや、お嬢ちゃん」
恰幅のいい露店のおばさんが、不思議そうに言う。
「なんですか」
「いや、その毛皮、どうしたんだい?」
「あ、これは貰い物で」
「貰い物!もしかしてシュヴァルツちゃんかい!」
驚いたかと思えば、笑顔になるおばさん。