ちゆまど―世界は全て君のために―
愉快と笑う吸血鬼は剣をあげた。
「殺したくなるほど」
ばっ、とシブリールさんが私とシュヴァルツさんの間に入る。
「貴様……!」
「冗談だよ、俺は襲ってこない限りは殺しはしない」
剣が下げられる。
「その点、ユーリちゃんは凄いよ。俺に“殺させたい”と思わせたんだから。大好きだ。だから、そんな大好きな君のために――」
さながら囁くように。
「綺麗な想いを持ったまま死なせたい。汚いものを見て、絶望する前にね」
何よりも甘い声で、殺したいと言ってみせた。
まだ言いたいことはあったけど、シブリールさんが無理矢理引っ張るので強制退去となった。
背中を向けるなり、何かを貪り食う音がいつまでも響いていた。