ちゆまど―世界は全て君のために―


(五)


結局、眠れずの一夜だった。


宿に戻り、寝ようとしたけど目が冴えてしまう。


珍しく、シブリールさんと話し込んでしまった。


『あいつは、純粋な偽善者なんだよ』


『君は理解できないだろうね。それだけのことをされない限りは』


色々と話してくれたが、結局のところは理解できないにまとまった。


シュヴァルツさんの影。あれほど、命を粗末にしないと言ったのに、殺すのは簡単。


自分を狙うものは生かすことはしない、容赦ない鬼。


一見すれば無害なのに、引き金を引けば発砲する凶器だ。


彼のことを理解しようにもできないのは、また彼も私と生きている次元が違うからなんだろう。


「やっほー」


出立の準備をしている時にシュヴァルツさんが現れた。


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