ちゆまど―世界は全て君のために―
「自分も綺麗になれると思ったら、大間違いだ」
小声で言われたことは聞き取れなかった。
ただ。
「知っている」
彼を押し退けるシブリールさんはどこか悲しげだった。
そんなシブリールさんにやれやれと彼は私を見る。
「約束通り、二号様の居場所教えるよ。地図ある?」
皮袋に入っている旅の必需品たるそれを渡した。
えーと、と言いながら指差した。
「ここだね」
彼が指差した場所はずいぶんと東寄りだった。
「ライメント跡地……東ベルク帝国の近くじゃないですか」
「ほんとだねえ、感覚的に居場所分かったけど。地図で見ると……二号様、何やっているんだろう」
「シブリールさん、ライメント跡地って」
「もと町だった場所だ。地下水脈が切れて、だいぶ昔に町人たちは町を捨てたんだ。今は誰一人としていないかな」