ちゆまど―世界は全て君のために―
むうとしてしまう。野良猫はなつかないのは知っていたけど。
「シブリールさん、ダメですって」
彼も猫に触りたいのか近づいていた。
思いと裏腹に猫は逃げない。
触るのかと思えば、彼はただ猫を見つめて。
「主人に問い合わせろ。“神々の黄昏”(ラグナレク)が会いたがっていると。会わぬなら、お前の可愛いポチを殺すと伝えておけ」
猫が逃げる。
あ、という間に建物の影に消えてしまった。
「シブリールさん、今の」
「こんな場所にあんな毛並みのいい猫なんているはずがない。あいつの使い魔だ」
「使い魔?」
「召還物のことだよ。使役している、知能が極端に低い動物類をさす。主に偵察に使われるかな」
「へえ」
あの猫がねえと思っていれば、ぴょこんと猫が出てきた。
ちょいちょいと前足で手招きをしたのには驚いた。