ちゆまど―世界は全て君のために―
「さすがはシブリール。相も変わらず、憎たらしい顔ですこと」
「そちらも変わらずきつい顔立ちをしているな、シンシア」
彼が部屋の中に入ったので、私も入る。
石壁に石床。
ただ棚が妙にたくさんあった。棚にはワインがいくつか残っている。
ワインセラーのような。階段の淡いランプの光と違って、ここはやけに明るかった。
部屋の隅や、棚の上に発光する何かがいた。
「しかもか、年甲斐もなく女性を連れ歩いているとは。あなたも所詮、物欲の塊ということなのでしょうね」
部屋の中央にはテーブルがあり、椅子もあった。
ワイングラスが置かれており、中には赤い液体が注がれている。
それを手にとる女性。
私より少し年上だろうか。金髪の品格が漂う女性だった。