黒騎士-ブラックナイト-
王女と王国
レイドが城を去り、3日が過ぎようとしている。
城下町の人々は、王女の側近騎士の失踪に動揺した。
この3日間、城はもぬけの殻だった。
いつもの賑やかさはなかった。
その原因は、レイドの失踪によるものでもあった。
だが、一番の原因はリィナだ。
「リィナ様、お食事の準備が出来ました。」
フゥリはリィナの部屋の扉に話しかけた。
扉の向こう側のリィナから返事はなかった。
「……失礼ながら入らせていただきます。」
キィ……
フゥリはいつもより重く感じる扉を、ゆっくり開けた。
目の前に、窓から星空を見上げるリィナの姿があった。
「リィナ様、お食事の準備が出来ました。」
「…………そぅ。」
リィナは振り向きもせずに答えた。
フゥリの目には、その姿がとても悲しく映る。
「リィナ様、今日は朝もお昼も何も口になさっておりません。どうか、お召し上がって下さい。」
「…………お腹が空かないの。晩もいらない。」
「リィナ様……。」
フゥリは何も言えず、頭を下げてから部屋を出た。
リィナはただ星空を眺めるだけだった。