黒騎士-ブラックナイト-
記憶と消滅
ここに来て何日経つだろうか。
側近騎士に認められた騎士にのみに、与えられる白い服が汚れている。
左足首に付けられた枷と鎖はまだ外れない。
まだ、自由の身ではないようだ。
「レイド、入るぜ。」
朝の食事をバリックが持ってきた。
「そろそろ外してくれないか?」
レイドは目線を左足首に向ける。
「すまねぇな。ロイドからまだ許可が降りねぇんだ。」
カチャ…
小さな机にトレイごと食事を置いた。
「ロイドはお前たちのリーダーなのか?」
「いや、俺たちにリーダーなんてねぇよ。ただ、レイドのことは、アイツが指揮してんだ。」
バリックは小さな椅子に腰かけた。
「…………。」
「まぁちゃんと外してくれるだろう。」
「せめて……。」
「ん?」
「せめて、外に連れていってくれないか?鎖はつけたままでいい。」
レイドはこの部屋の外の世界を見たかった。
自分と同じ“異人”と呼ばれる人間が住む世界を。
「……ロイドに聞いといてやるよ。」
バリックは少し笑った。
「すまんな……。」
「せっかく帰ってきた仲間だ。みんなに会わせねぇと。」