黒騎士-ブラックナイト-
ペラッペラッ……
リィナは必死にページをめくる。
フィルも横から並んだ文字を見つめた。
「あ!」
「あった!」
2人は声を揃えた。
「“黒き翼の民”……。」
リィナは“黒き翼の民”という言葉を探していた。
「“異人”と呼ばれる前の彼等の呼び名……!」
†
“黒き翼の民”
背中に黒き翼を生やせ、空を自由に駆け回る人間。
正式名は、ヴァペスリア民。
この種の人間は、男しか生まれない。
他の種の人間と交わり、子を成しても、不思議なことにヴァペスリア民の男が生まれる。
彼等の秘めたる魔力は、計り知れない。
全種類の魔術を極めるのも、一種の魔術を極めるのも、彼等には容易い。
魔法を発動させる時、瞳を赤へ変え、魔法陣を召喚する。
呪文はなく、魔力に命令するかのように吠える。
しかし、今より20年前。
ヴァペスリア民の血はたちまち絶えた。
昔は他の種の人間との交わりを好み、情報通の彼等は情報を提供していた。
そのことを知らぬ子孫たちは、ヴァペスリア民を“異人”と読んだ。