黒騎士-ブラックナイト-

ロイドは微笑んだ。

しかし、レイドはキョトンとして、ロイドの言葉を理解できなかった。

「いや、いいんだ。」

「ロイド……。」

レイドは呟くように言った。

「オレは、あの王女を知っている……?」

ロイドの眉が少しだけ動いた。

「何をバカなこと。レイドが“聖人”の女を知っているはずねぇだろう?」

「あの王女はオレを知っているのか?」

「オレたち“異人”は、“聖人”の奴等に知られていて当然。だから、何らかの経路でお前を知ったんだろう。」

「…………そうか。」

レイドは背を向け歩きだした。

しかし、何かひっかかる。

あのリィナという王女は、自分の名を知り、親しそうに話しかけてきた。

…………懐かしい?

でも、自分の記憶には彼女はいない。

あるのは“聖人”たちが自分たちを見放したこと。

魔法陣が奪われたこと。

ロイドと双子の兄弟であること。

バリックたちは仲間であること。

ただ、それだけ。

「……オレは誰だ…?」



ロイドは屋上で夕日を見つめていた。

ただぼんやりと、何も考えず。

< 189 / 304 >

この作品をシェア

pagetop