黒騎士-ブラックナイト-
ロイドは微笑んだ。
しかし、レイドはキョトンとして、ロイドの言葉を理解できなかった。
「いや、いいんだ。」
「ロイド……。」
レイドは呟くように言った。
「オレは、あの王女を知っている……?」
ロイドの眉が少しだけ動いた。
「何をバカなこと。レイドが“聖人”の女を知っているはずねぇだろう?」
「あの王女はオレを知っているのか?」
「オレたち“異人”は、“聖人”の奴等に知られていて当然。だから、何らかの経路でお前を知ったんだろう。」
「…………そうか。」
レイドは背を向け歩きだした。
しかし、何かひっかかる。
あのリィナという王女は、自分の名を知り、親しそうに話しかけてきた。
…………懐かしい?
でも、自分の記憶には彼女はいない。
あるのは“聖人”たちが自分たちを見放したこと。
魔法陣が奪われたこと。
ロイドと双子の兄弟であること。
バリックたちは仲間であること。
ただ、それだけ。
「……オレは誰だ…?」
†
ロイドは屋上で夕日を見つめていた。
ただぼんやりと、何も考えず。