黒騎士-ブラックナイト-
ティアラの視界はぼやけていた。
彼女の顔のすぐそばに、ロイドの顔があった。
ロイドの顔だけはちゃんと見えた。
「ティアラ!!しっかりしろ!」
「…ロイ……ド……ア……タシ……」
「今すぐ里に連れてって……!」
ティアラはロイドの手を優しく握った。
「……いいの……もういいわ……」
「バカなこと言うな!」
「ア…タシ……幸せだ……った……」
ティアラは涙を流した。
「最後の……お願い……」
ロイドは何も言わず、次の言葉を待った。
「……キ…ス……して……」
ロイドはティアラの頬に手をあて、ゆっくり唇を重ねた。
彼も涙を流していた。
つむっていた目を開き、顔を離してティアラの顔を見ると、彼女は目を閉じたままだった。
「ティアラ……?ティアラ!!ティアラ!!!!」
ロイドはティアラの体を揺すった。
しかし、彼女はびくともせず眠り続ける。
ロイドはティアラの胸に耳を当てた。
…………
心臓はもう止まっていた。
「ティアラァァァァァァアアアアアア!!!!」
ロイドは泣き叫び、ティアラの名前を何度も叫んだ。
ティアラの表情は、どこか幸せそうだった。