黒騎士-ブラックナイト-
サタンは左手で刃を掴んだ。
手からは血が流れる。
シューの目から涙が溢れた。
「身体は人間だろ……これで……よかったか……?」
「くそったれ……!!!」
シャッッッ
サタンは剣を振りかざした。
カシャン……
「くそ……まだ生きてた……か……」
腕に力が入らず剣を落とした。
ゆっくりと、その腕をおろし、小さな手がシューの頬をなでた。
「クゥリ……?」
「あり……が…と……」
クゥリは笑顔で言った。
「すまない……!私が弱いばからに……!」
クゥリはゆっくり首を横に振った。
「シューは……優しい…から……強い……の…」
頬に触れた右手が、だんだん力を無くし下がっていく。
「私……の…家族を……護って……ね…」
くすんだ瞳に映るシューの姿が、消えてゆく。
クゥリの身体の力が抜け、頭が重力に逆らえず、がくんっと傾いた。
「クゥリーーッッッ!!!!!!」
シューは泣き叫んだ。
彼女の身体を抱きしめて。
†
「クゥリ……?」
城中を走り、リィナを探していたフゥリが、ピタリと足を止め、走って来た廊下を振り返った。