黒騎士-ブラックナイト-
この男は、自分の権力を護ることしか頭にない。
こんな奴のために、私たちは命を差し出すのか?
ロッツォだけでなく、同行していた騎士たちも、同じことを思った。
「フィル王子、ここは一度国へ戻り、策を練りましょう!」
ロッツォは本心を胸の奥に押し込み、状況を見て、逃げることにした。
「策を練ったって、私たちルーゼンの魔術には勝てませんよ。」
ブワッッ!!
男の足元から風が巻き起こり、一瞬にして姿をくらませた。
「ルーゼン……あの国が無ければ!」
フィルは鋭い目付きで、ルーゼン・ウルクの城がある方角を睨んだ。
†
リィナは魂が抜けたように立ち尽くしていた。
「しっかりしろ!何かの間違いかもしれない。」
レイドが声を掛けても反応しない。
彼女は放心状態に陥った。
「どうして……誰が……そんなことを……。」
彼女はずっとそう呟いていた。
「リィナ!お前が動揺して何になるんだよ!しっかりしろ!国民を信じろ!」
レイドは説教するかの様に、リィナに話しかけたが、それでも涙を流し続けた。
「リィナ王女様!大変です!」