黒騎士-ブラックナイト-
レイドは小さな机に食事を置き、ベッドに腰かけた。
「みんなは“家族”か……。」
「ん?」
フィルはぼんやり光る月を、ただ見つめながら言い続けた。
「自殺した母上は、いつもそう言っていたってロッツォから聞いたことがある。ただ、親父はそんな母上の人間性を否定していたんだ。」
「そうだったのか……。」
「母上が自殺した理由は、親父の降るまいに嫌気がさしたからなんだ。その時に俺は、『あのような人間になるな。』と言われて来たんだ。」
フィルは涙を流した。
「それから俺は、親父に言われるがままの性格になってたんだな……。悪いことしたな……国民(アイツ等)に。」
そうか……そうだったのか。
俺は、ただ権力で身を守っていたんだ。
騎士にも国民にも関心はなかった。
フィルは母の言葉が、初めて胸に焼き付いた。
「オレは記憶がないんだ。11歳までの。」
レイドは呟くように言った。
「そんなオレをリィナは受け入れてくれたんだ。一度は牢屋に入れられたのにな。」
「…………なぁ。」
「なんだ?」
しばらく空気が止まった。
「……なんでもねぇ。」