黒騎士-ブラックナイト-

次の朝、フィルは自らフゥリの元に行った。

「なんだ?」

「……今日は何の仕事をすればいい?」

フゥリは一瞬驚いたが、すぐに表情はやわらかくなった。

「今日はそうだな……外壁の掃除を頼もうか。」

「はいよ。」

フィルは、本当は寂しかったのかもしれない。

幼い頃に母は自殺し、権力を振りかざす父の背中を見て育った。

間違った父の人間性を正しいと思って生きてきたが、実際はそうでなかった。

それに気付くのが遅かった。

王位に就いていた時、孤独感を覚えた彼は、今も孤独なままだ。

しかし、今はルーゼンの家族になりたい。

孤独を癒せるなら、何だってする。

「フィル、私も手伝おう。」

昼前に、外壁をブラシで磨いていたフィルの元にフゥリはやって来た。

「ありがとうな。」

「わかったであろう。なぜ私達が王女様を慕うのか。」

「まぁ……な。」

「アナタの城も、身の回りのことも全て、国民や騎士がしてくれていたんだろう。気づいていたか?」

「……。」

「まだ時間はある。ゆっくりリヴェンの国民とルーゼンの国民と打ち解ければいいんだ。」

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