黒騎士-ブラックナイト-

「きゃ!」

ドサッ!

リィナは尻餅をついて、その場に座り込んだ。

レイドは死人のような気力を失った瞳をしている。

瞳はあの巨大な魔法を放った時と同じ燃える赤に染まっていた。

「……ルーゼンの王女。」

レイドは彼女を見下しながら、呟くように話す。

「レ……イド……?」

「……返せ…」

レイドは魔法陣を浮かばせ、リィナを睨んだ。

「返せ……返せ……返せ……!!」

パアァァァアア……

どんどん魔法陣の光が強くなる。

「レイド……?」

「オレ達の聖域を返せ……!!」

ブワッッッ!!!

魔法陣から吹く風が、勢いよく吹き荒れる。

「切り裂けぇぇぇ!!!」

風がリィナに襲いかかる。

「ネ……」

リィナは唱えようとしたが間に合いそうにない。

だめ……殺られる!!

ドッッ!!!

ザクザクザクザクッッッ!!!

――風が止んだ。

「……?」

閉じていた目を開くと、傷が全くない。

リィナは無傷だったのだ。

「え……な…なんで……?」

ぽたっ……

ぽたっ……

血が、地面で弾ける音がした。

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