Star Rain.
「梨奈」



しばらくの沈黙のあとに、ぽつりと言った。

あたしはびっくりして、目を合わせた。



すると将は、座っていたベンチから立ち上がって、あたしの前にきた。

「ごめんな」と言うと、慣れたはずのぬくもりが包んだ。

ただただびっくりして、それに答えるように腕をまわすこともできなかった。



「ちょっと、」

「理由も、聞かないでおくから」



「だから最後に」と、小さく言った。

くぐもった声。耳の近くで、それは鮮明に聞こえた。



「あと十秒ね」

「リミットあるんだ?」

「あるよ」

「んー・・・うん、わかった」



ふふっと笑って、すぐに静かになる。

あと十秒って、なんであたしは今のタイミングで言ったんだろ。

最後くらい、もっとちゃんとすればいいのに。

でも、

"離れたあとの寂しさがもしもきたら"って考えると、嫌になった。


そういう未練がましい思い、嫌。

終わりは終わり、そう決めないと、めんどくさいことになるのは今までの経験でわかっているつもりだったから。



「・・・よし。ありがと」



離れてから、ぽんぽん。と二回私の肩に手を置いた。

じっと目が合って、そしたら将はいつものように笑った。

離れたときに、いつもの香水の香りがした。



「じゃあ、駅まで送る」

「うん、ありがとう」



隣に並んでまた、歩き出す。

公園からはもう近いから、3分もすれば着いてしまう。

だけどそれくらいがちょうどよかった。

すーっと離れられそうな気持ちが、だんだん薄れていっているような気がして。

もうこれ以上将と居たら、自分の決意が曲げられそうになる気がして。



"最後"だなぁって思いながら、

駅に向かう、道を歩いた。
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