巡愛。〜ずっと傍にいて〜(仮)
「あ…っ」
「…あ…。」
結衣さんの家から我が家へ帰る道中、またしても出会ってしまった。
“彼女”に。
俺を見つめる大きな瞳から、俺は視線を逸らした。
…やめてくれ。
どうして今更出会ってしまうんだ。
俺の心を…かき乱すのは、やめてくれ…!
俺は黒のキャップを深く被り、通り過ぎようとした。
「あの…っ忘れてしまったのですか…?」
今にも泣き出しそうな、か細い声が追ってきた。
その声に…俺の中の晴信が、応えてしまった。
「…忘れるものか。君は彼女と生き写しだ。晴信の一番最初の正室、上杉の方にな。」