巡愛。〜ずっと傍にいて〜(仮)

「お主、ここの者ではないな?何故、こんな所におる?」



だが、娘は涙をはらはらと流し、何も答えない。



「…答えなければ、斬るが?」



実際に間者ならば、斬るしかあるまい。


だがそれでも娘は答えなかった。


ただ、はらはらと涙を流すのみ。


…実際に間者であるならば、隙があり過ぎて間抜け過ぎる。


それに黒髪でもなく、栗色で縮れた髪。


聞いたことがある…鬼と呼ばれる者は、黒髪ではないと…。


もしや…。



「そなた…今日、輿入れして来た…上杉の姫…か?」



その名を呼んだら、図星なのか肩を激しく震わせた。



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