Love&Cocktail
彼女はカクテルグラスを握りしめ、一気に飲み干した。
「ありがとう、お姉さん。愚痴聞いてくれて助かったわ」
彼女はニコッと無理に笑うと、お代をテーブルに置き、出ていった。
「あ…ありがとうございました……」
あたしは早口に言った。
――バタン…
バーの扉が閉まり、あたしは呆然としていた。
今まで色んなお客様のお相手をしてきたけど…
“不倫してる”なんて暴露してくる人はいなかった。
愚痴といっても“仕事が上手くいかない”とか“彼氏、彼女と喧嘩した”とか。
今日を経験して…あたしもまだまだ未熟だな〜って思った。
バーテンダーとして…もっと頑張らなきゃ。
「――乃愛!次、“ギブソン”と“デュボネ”作って」
杣沢さんがあたしにオーダーを頼んできた。
「あ、はいっ!」
あたしは頭を切り替えると、カクテル作りに励んだ。