Love&Cocktail
ブラック・ローズ
「――乃愛、ちょっといい?」
「はい?」
あたしはグラスを拭く手を止めた。
杣沢さんがあたしに声を掛けてきたんだ。
「乃愛にお客さんが来てるんだけど…」
「お客さん?」
いったい誰だろ…。
あたしは首をかしげた。
「なんか乃愛の古い友人だって行ってたよ。とにかく行って差し上げて」
杣沢さんは“ほらほら”と言って、あたしの背中を押す。
古い友人…?
高校の同級生とかかなぁ…。
あたしは作業を中断し、バーを出た。
入り口にいた人を見て、あたしは開いた口が塞がらなかった。
「と、斗真…」
そこにいたのは…
半年前に別れた元カレだった…。