絶対彼氏
あぁ、もう早く出たい!!
既に涙目の私を隣から見ている紫苑
「…の…やる…
…呪ってやる…ノロッテヤル…」
そう言うと女性は私の方へ歩み寄ってきた
歩く度に髪揺れ、髪の間からチラリと見えた顔は青白く、目は虚ろだった
その目は何故か私を睨んでいた
「もういやぁぁぁああ!」
怖くなった私はそう叫びながら走り去った
何処まで走ったか分かんないけど、足が止まったその場でペタリと座り込んだ
紫苑も置いてきたので逆に心細くて…怖くて逃げ出さなきゃ良かったと少し後悔
曲がり角の端で踞って居ると誰かに腕を引っ張られ立ち上がらされた
怖くてまた、逃げ出そうとするが逃げられず、そのまま抱き締められた
「なんで逃げんだよ…」
「し、おん…」
背中から抱き締められてるので顔は見えないが、この声は紫苑だ
どうやらここまで走ってきたらしく肩で息をしてる
「ごめん」
小さな声は今にも消えてしまいそうだったが、耳元で言われたので聞き取れた
「もういいよ…」
紫苑が謝るのは可笑しい
そう言おうとしたら抱き締める腕にさっきよりも力が入った
「さっきお前が走っていったとき、マジで俺焦った…
お前が…瑠璃がここまでお化け屋敷が苦手とか思わなくて…無理矢理連れてきてごめん…
」
いつもより弱気なその声に…本当に心配してくれたんだって思えた
「いいよ、私が紫苑の行きたいとこに行くって言ったのも原因だし」
服の袖で目から溢れる涙を拭き紫苑の方を向き笑いながら言った
「取り敢えず早くでよ?
やっぱり怖いからさ」