悲劇
誓志は、脈を取ったが、それも全くなかった。

誓志は、人工呼吸をしなくてはと思い、テレビで見たことのあるやり方で、心臓マッサージと人工呼吸を繰り返した。

しかし、2,3度やったところで、あまりの出血の多さで無理だとどこかで感じてしまった。

そう思った瞬間、自分の手がもう動かなかった。

誓志は、麻矢を抱え起こすように、自分の胸に抱いた。恐ろしいほど流れた血とは対照的に、顔にはほとんど損傷がない。

それどころか、誓志には、笑っているように見えた。それも幸せそうに。
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