初恋
第一部‐小学生編‐
始業式
春、春、春―
どこを見渡しても、春。
校門の横にもたれ掛かるように咲く桜は満開で、
どこからともなく漂う風はお花の匂いがして、
「うぇっ…くちゅんっ…」
花粉症のあたしの鼻も絶好調。
「大丈夫?愛里ちゃん…」
朝からもう何度目かもわからないくしゃみに、親友の杉田彩花が何度目かもわからないティッシュを差し出した。
「ありがど…スギぢゃん…」
「今日から新学期だっていうのに愛里ちゃん可哀相…。花粉症の期間くらい学校早く開けてくれたらいいのにね。」
まゆげをしょんぼり下げて無茶なことを言うスギちゃんが抜群に可愛くて、あたしは鼻をかみながらえへへと笑った。