初恋

「すいません。俺ここじゃ見えないんですけど。」


と、真ん中の列の1番後ろの席から山田が言った。


「見えないから、前の席に移動したいんですけど。」

「あら?山田くん目良くなかった?」


不思議そうにフジコが尋ねた。


「受験勉強で最近視力めっちゃ落ちたの。」


不機嫌そうに山田が答えた。


“受験”という言葉にほんの少し胸が痛む。

山田はあたしや穂香や石井なんかの行く公立中学には進学せずに、スギちゃんやみづほのように私立の中学を受験する。

なんとなく、山田をそばで想い続けられる期限を思い知らされる。

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