初恋
「そんで、親友の石井くんが1番前の可愛い時任の隣を譲ってくれるらしーんですけど。」
“可愛い時任”という言葉に思わず反応して顔に血が上っていくのを感じた。
石井をからかってるだけだってわかってるけど…あたしきっといま真っ赤だ。
「あらそ、じゃ石井くん、残念だけど可愛い時任さんにバイバイして。」
「は!?は!?は!?」
石井は言ってる意味がわからないという風にフジコと山田を交互に見た。
「じゃー山田くん、いま席移動しちゃってね。ほかに見えないって人いなーい?」
石井のことなんてお構いなしにフジコは席の交換を進める。
「ちょ!は!?俺のときとおぉぉぉぉぉお!」
オーバーに悲しむ石井にクラスが再び笑い声に包まれ、あたしはその背中をバシッと叩くことでなんとか“可愛い時任”ショックを忘れようとした。