初恋
「愛里ちゃんの山田くん愛はホンモノよねー♪」
うっとりした目でスギちゃんが空(くう)を見ると、ミーハー穂香も同じ方を向きながらうんうんとうなづく。
「あれは、1年生のときのことでしたぁ…」
「ちょ!ちょっとやめてよ!」
慌てて穂香の口を抑えようとするも、すっかりナレーターよろしくなミーハーは構うことなく恥ずかしい思い出話を続ける。
「入学してまだ間もない4月のこと、天性の方向オンチの愛里ちゃんが漏れそうなのを我慢してトイレを探してたトコロへ、早くもガキ大将として君臨していた山田航太くんとその子分たちが廊下を激しくダーッシュ!愛里ちゃんに激突し、その衝撃で愛里ちゃんはおもらしをしてしまいました。それを後の親友白井みづほのダンナである石…」
「ちょっと!!!」
「…石井俊が盛大に茶化し、小さな愛里ちゃんは号泣。」
“ダンナ”という単語にみーちゃんが激しく反応するもミーハーはニヤリと笑ってナレーターを続けた。
「そこを担任の岩本先生が通りがかり…」