初恋

初めて入る保健室が思いの外怖くなくて、愛里はホッとする一方、入学早々男の子の目の前でおもらししてしまったという事実に、顔から火の出る思いでいた。


「愛里ちゃん、このタオルで身体拭いて。…自分で拭けるわね?」


里美は真っ赤な顔でこくりとうなづく愛里の頭を撫でた。


「大丈夫よ、あの子たちには先生がちゃーんと口封じしておくから。」


“口封じしておくから”という言葉に恥ずかしさが一気に込み上げ、必死で身体をごしごし拭く愛里の目から再び涙がこぼれ落ちた。


「あら、もう泣いちゃダメよ愛里ちゃん!涙を我慢する魔法教えてあげる。あのね、奥歯をぎゅーっと噛んで私は強いって言うの。そうしたら涙がどこかへ消えていくのよ。ほら、ぎゅーっ!」


里美の掛け声とともに奥歯を噛むと、本当に涙がぴたっと止まった。


「ね、凄いでしょ?先生の魔法よ♪」

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