アイツに彼氏が出来た。
ぽんぽんと、コイツの頭を叩く。
「お祝いって、そんな御大層な…」
「ん、何か奢ってくれるの?」
遠慮するダチと、はにかんであどけなく喜ぶコイツ。

…何だよ、良いコンビじゃねえか。

掌をコイツの頭から離す。
そうしないと、縋ってしまいそうだから。
「…でも、今日は無理そうだな。」

「何か用事でもあるのか?」

「あぁ。ちょいと家の用事でな」
嘘だ。
そんな用事なんて、
無い。

「え、そうなの?…ごめん、いきなり呼び出して」
申し訳なさそうに謝るコイツ。

「まぁいーぜ。そのお祝いはお前持ちってことで」
「え、何それ!?せめて割り勘!」

慌てるコイツに、笑う俺とダチ。

「じゃ…。俺、行くから。お熱い恋人さん達は置いといて、お邪魔虫は退散しますよ」
そう言いながら、無性に死にたくなった。

「恋びっ…、うん、じゃな!」
若干、頬を染めながら早口にコイツは答える。
そんな照れた琴美を見て、俺の何かがきつく締め付けられる。

「おう。明日学校でな」ダチの言葉に背を向けて、手を緩く振って返す。

そして俺は、公園を出た。

そして、

全速力で駆けた。
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