アイツに彼氏が出来た。
走らないと、泣いてしまいそうだったから。
壊れてしまいそうだったから。

駆ける、懸ける、翔る

がむしゃらに、道の角を曲がる。
そのまま走る。


想いを馳せる、巡らせる。

俺にとって、アイツは何だった?
アイツにとって、俺の存在は何だった?

…知ってる。
知っていた。
気付いていた。

ダチがアイツに想いを寄せていること。

アイツがダチのことを気にかけていたこと。

――本当は、

俺がアイツを好きなこと。


知っていたのに。
気付いていたのに。


身近な変化を、恐れた。


無知のふりをした。
気づいていないふりをした。

けど、破綻した。

「っは、っは」

足に限界を感じ、
よろけて、そのまま膝をつく。

そして気付く。

「っく…」

今、俺は泣いていることに。
< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop