zinma Ⅰ
走っていくイルトとシューをしばらく呆然と眺める。そしてやっとラニテイが口を開いた。
「シューも必死だね。」
それにナギキとテマはラニテイを見て、そうだね、とうなずく。しかしそのあとテマが口をとがらせて言う。
「だけどテマだって今日はイルトと遊びたかったのにー。」
ナギキも珍しくテマの言葉にうなずいて、
「そうだよなー。いつもなら気にしないけどさ。
今日は俺たちだってイルトと遊びたいよ。」
そう、今日は。
今日は絶対に5人で遊ぼうと、1ヶ月も前から3人で話していたのだ。
それに、あーあ、と声を出してから、つまらなさそうにラニテイが言う。
「まあシューはシューで、今日だからこそイルトとふたりっきりがいいんだね。」
そう言ってラニテイは、はははと笑う。テマはまだ不満そうだったが、イルトたちを追いかけないところを見ると、テマもシューの気持ちをわかっているようだった。
それを見て、ナギキはうんっと一度うなずくと、
「とりあえず3人で遊ぼうぜ。イルトたちとは今日の夜会えるし。」
それにテマは急に元気な顔になって、
「夜かあ!楽しみだねっ!
今日はママが夜起きててもいいって言ってくれたの!」
とはしゃぐ。それにラニテイも、
「僕もだよ!こんなこと祭でしか許してもらえないしね!」
とはしゃぐので、ナギキも楽しみになって心がはずむ。
ひとしきり今日の夜の話をしてから、3人は歩きはじめた。
「それにしても夜まで何するかなー。
しょうがないからテマの家でもいいよ。」
とナギキは言って、テマがやったー!と言う。それにナギキとラニテイは笑って、テマの家へとむかう。
ナギキはふと空を見上げる。そして歩きながら、んーっと一度背伸びをしてから、だれに言うでもなく、つぶやいた。
「それにしても良い天気だなー」
空は快晴。春から夏に変わるこの季節の空は、いつもより青く見えた。