zinma Ⅰ
それから3日がすぎた。
女の人と男の人はあのあと、またフードを被ってあの場を離れた。
ひとつだけ、約束をして。
『また3日後にここに来る。お前のチカラに関する話は決して単純なものではない。もしかしたら、それが魔術だと思っていたほうがお前には幸せなのかもしれない。』
そして一度僕の肩に手を置いて、続けた。
『その運命を受け入れる決心がついたら、3日後にここに来い。来なくてもいい。お前が決めろ。』
そう言って、森に消えた。
それからの僕は、いつものような生活をする気にはなれなかった。
毎朝のアルマさんの仕込みの手伝いもしなかったし、シューとの遊ぶ約束もやぶった。
ごはんものどを通らず、毎日森の木に昇って、どこを見つめるでもなく、ぼんやりと過ごした。
みんな心配してくれたけど、少し風邪をひいただけです、と苦し紛れの嘘をつくだけだった。
それでもシューは毎日寝る前に僕の部屋に来て、一生懸命話しかけてくれた。
それにも下手な作り笑いを浮かべるだけで、申し訳ないとは思ったけど、どうしても笑う気にはなれなかった。
僕は森に来ていた。
3日前にあの人たちに出会った森。
約束の場所。
僕は右手に、シューからもらったお守りの石を握っていた。
首飾りの花は枯れてしまったので、石だけを外して、持っていた。
この決心が揺らがないように。
願いをこめて。
朝早くに出かけてきたのに、2人はもうそこにいた。
すぐに僕に気づいて、2人とも僕を無表情で見つめた。
女の人は会ったときから無表情だけど、男の人は無理に表情を消しているようだった。