zinma Ⅰ
神魔の卵
気を失うまで、僕は泣いた。
起き上がると、3日前と同じように女の人と男の人が待っていた。
泣きすぎて、頭が上手くまわらない。
「……私たちは、先祖代々、『選ばれしヒト』を見守ってきた一族だ。」
僕が起きたのを確認した女の人が静かに語る。
それをぼんやりと聞く。
男の人が今日始めて口を開く。
「私たちの仕事は、『選ばれしヒト』に知識を授けることなんだよ。」
知識?
なんだろう。
次は女の人が言う。
「私たちの一族は、もう何百年もの間『選ばれしヒト』を見守り、『神の呪い』についての知識を蓄えてきた。」
何百年も………?
それはつまり…………
「……今までに何人も『選ばれしヒト』は現れているということですか?」
と僕が聞くと、女の人が顔を歪め、うつむく。
同じように顔を歪めた男の人が答えてくれる。
「そうだよ。」
疑問だ。
「なぜ何人も現れるんですか?『選ばれしヒト』は、いつまで、現れ続けるんですか?」
それに、男の人はゆっくりと、丁寧に言葉を選ぶように、話し始める。
「…この世から、『呪い』がすべて消えるまでだよ。そして……………」
一度つらそうに言葉を止める。
「先代の『選ばれしヒト』たちは………………ことごとく、失敗したんだ。」
急に、ぼんやりとしていた思考が、はっきりと目覚める。
失敗?
それは、どんな失敗?
男の人が続ける。
「あまりにも『呪い』が強すぎて、過去の『選ばれしヒト』は、その神から与えられた、『呪い』を殺す任務を果たす前に…………『神の呪い』に、侵されて。
死んだ。」