zinma Ⅰ

神魔の卵




気を失うまで、僕は泣いた。



起き上がると、3日前と同じように女の人と男の人が待っていた。

泣きすぎて、頭が上手くまわらない。




「……私たちは、先祖代々、『選ばれしヒト』を見守ってきた一族だ。」

僕が起きたのを確認した女の人が静かに語る。


それをぼんやりと聞く。


男の人が今日始めて口を開く。


「私たちの仕事は、『選ばれしヒト』に知識を授けることなんだよ。」


知識?

なんだろう。



次は女の人が言う。


「私たちの一族は、もう何百年もの間『選ばれしヒト』を見守り、『神の呪い』についての知識を蓄えてきた。」


何百年も………?

それはつまり…………




「……今までに何人も『選ばれしヒト』は現れているということですか?」


と僕が聞くと、女の人が顔を歪め、うつむく。

同じように顔を歪めた男の人が答えてくれる。


「そうだよ。」



疑問だ。


「なぜ何人も現れるんですか?『選ばれしヒト』は、いつまで、現れ続けるんですか?」


それに、男の人はゆっくりと、丁寧に言葉を選ぶように、話し始める。



「…この世から、『呪い』がすべて消えるまでだよ。そして……………」


一度つらそうに言葉を止める。



「先代の『選ばれしヒト』たちは………………ことごとく、失敗したんだ。」


急に、ぼんやりとしていた思考が、はっきりと目覚める。


失敗?

それは、どんな失敗?



男の人が続ける。

「あまりにも『呪い』が強すぎて、過去の『選ばれしヒト』は、その神から与えられた、『呪い』を殺す任務を果たす前に…………『神の呪い』に、侵されて。






死んだ。」





< 50 / 77 >

この作品をシェア

pagetop