zinma Ⅰ
悪魔の夢
そのあと、2人は僕といっしょに村に来た。
村の人たちに、僕を引き取ると伝えに。
だが神や『呪い』や『選ばれしヒト』の話はしない。
カリアが言うには、普通の人間がこのシナリオに関わるのは、危険なことなのだという。
『ヒト』は。
自分を傷つけると知りながら、『力』を求めるから。
カリアとファギヌは、始めにアルマさんの家を訪れた。
シューはラニテイたちと遊びに行っていて、いなかった。
僕が外界のものを連れて来たので、アルマさんはとても驚いていた。
カリアは、自分たちを旅の者だと言った。
いくつもの国を旅してきて、イルトと同じような金髪と碧眼を持った人たちの国を見たことがあると。
たまたま森で出会ったイルトに、その国のことを話したら、どうやら記憶が戻ったらしい。
それで、イルトをあの国まで連れて行ってやりたい、と。
最後までアルマさんは、浅く相槌をうちながら、静かに聞いていた。
カリアが話し終わると、アルマさんは、
「ほんとなの?イルト」
と聞くので、僕がうなずくと、しばらく何も言わなかった。
そして僕をきつく抱きしめると、
「よかったわね、イルト。」
と震える声で言ってくれた。
アルマさんに嘘をつくのは、心苦しかったけど、アルマさんをこんな腐った世界に巻き込みたくなかった。
そのあとアルマさんについて、村の人たちに、村を出ることを報告しに行った。
ある人は記憶が戻っことを喜んだ。
ある人は涙を流して別れを惜しんだ。
ある人は僕に行かないで、と言った。
人間の「イルト」は、なんて幸せだったんだろうと、今さら実感した。