zinma Ⅰ
少しして、なんとか泣きじゃくるテマをなだめ、涙を浮かべながら怒るナギキに謝り、僕の別れを惜しむラニテイに感謝して、僕はシューと家に帰っていた。



さっきからシューは、何も話そうとはしなかった。



それに僕は、どうしよう、と考えながら、心の中でシューに謝り続けていた。



そこでシューがやっと話した。


「…………ねぇ、イルト。」


それにできるだけいつもと変わらない声色を作って、僕は答える。


「なに?」



するとシューは、予想外に、いつもの明るい笑顔でこっちを振り向き、言った。




「森に行こ。」








森はいつもと変わらず、爽やかな空気につつまれていた。


僕にはもう森は前とは同じようには見えなくて、それに居心地の悪さを感じながら、前を歩くシューについて歩いた。




やがて湖にたどり着くと、シューはそのほとりにしゃがんだ。

僕も同じようにしゃがんだ。



「………行っちゃうんだね。」


シューが突然切り出す。


それに僕は、

「うん。」

と答える。



「もう決めたんだよね。」

「うん。」

「でもこれでやっと古里に帰れるね。」

「うん。」

「……よかったね。」

「…うん。」

「……………さみしいね。」

「……………うん。」




そこで会話は途切れる。



次は、僕が切り出す。


「……シューにだけは、言っておきたいことがあるんだ。」

「え?」


そこで僕は立つ。

シューは僕を見上げる。

その大きな黄緑色の瞳を僕は見つめた。



「ほんとうの、僕について。」





僕は一生懸命話した。

普通の人間として生きているシューにとっては、僕の話はお伽話のような話しだ。

神様とか呪いとか。



だから僕は、ゆっくり、丁寧に、シューにすべてを話した。





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