zinma Ⅰ
途中までシューは、僕のことを驚いたような疑うような顔で見ていたが、そのうちに静かな温かい目をするようになった。
「ーーーだから、僕は、化け物なんだ。」
「………」
「ほんとはこのことはだれにも言っちゃいけないけど。」
「………」
「シューには…言っておきたくて…」
そこで僕は口を止めた。
シューはいまはうつむいて、地面をじっと見つめていた。
何を考えているのかな。
きっと、化け物を目の前にして、恐れているんだろうな。
それに僕は、これでよかった、と思う。
このままシューが、僕から離れてくれれば。
化け物の僕に、シューは関わらないほうがいい。
どうか、僕のことは、忘れて。
そう言おうとしたとき、シューが顔を上げた。
僕は、その顔を見て、何も言えなくなる。
まっすぐに僕の目を見るシューは、今まで見たことのない、凛とした、芯の通った強さを秘めた顔だった。
改めて、シューは綺麗な顔をしている、と思った。
「イルト。」
「…」
「ちがうか………レイシア。」
その名前を呼ばれて、なぜか心臓が震える。
シューは、静かだが、強い声色で言った。
「……化け物だなんて、言っちゃだめ。」
「………え?」
頭が真っ白になり、シューの声だけが頭に響く。
「レイシアは、化け物なんかじゃない。少なくとも、あたしはそうは思わないよ。」
涙が。
「私がこの1年ずっといっしょに過ごしてきたイルトは、すごく優しい人だった。
レイシアがおしえてくれた神様の話で、レイシアが何者かっていうのは、あたしにはむずかしい話だけど………
でもその話に出てくる神様とか『ヒト』とかは、すごく嫌な人な感じがする。
でもイルトは優しい。
それなのに、優しくない『ヒト』が人間で、優しいイルトが化け物だなんて、あたしは嫌だよ。」
涙がこぼれる。