【完】風に恋をする。
「理由を教えてください。でないと、
帰れません」
「邪魔だからだよ。邪魔。練習の、じゃ・ま」
「…っ」
「睨んでも練習には出さねーぞー。明日練習に出たかったら、帰れ」
「…部長」
「ん? あぁ、いちようストレッチしとけよ」
「はい」
俺はベンチの横でストレッチを始める。
そんな俺のところに駆け寄ってきたのは、ヒガ。
「あ、あのね、風馬」
「わかってる」
「ぇ…」
「わかってるよ」
「…」
「ヒガ、わりぃけどストップウォッチ貸して。明日絶対返すから」
「…バカだね。せっかくなんだから、会いに行けばいいじゃない」
「逢いに行くのは簡単だけど、”一番”は簡単じゃない」
「…そっか。あんたにも、理性があったんだねー」
「当たり前だ、ボケ」
「…ねぇ、約束、ちょうだい」
「は?」
「”絶対世界の切符もって帰ってくる”って」