【完】風に恋をする。
コンコン、とドアの向こうからノックの音。
「野村さん、失礼します」
「…」
入って来たのは、いつもの女の看護婦さん。
『鷹野さん』っていうんだ。
仕事熱心で、無愛想なあたしにいつも優しく接してくれる優しい人。
だけど、それが嘘くさく見えてしまうあたし。
失礼だけど…。
「体調はどう?」
「…別に」
「具合悪い? 今日は特に暑いからね」
「…良いって答えたら、外に出してくれるんですか」
「…」
ほら。
どうせ、みんなあたしのご機嫌取りにきてるだけなんじゃないの??
「…普通です」
「…また夕方にくるから」
そう言って、部屋を出て行った。