【完】風に恋をする。
「風…?」
「そう、風。あいつが走ると、風が吹く。周りの空気が、一気に温かくなる…そんな風がな」
「…」
「まっ、あいつの場合走りすぎるときもあるんだよなぁ!!」
「それって危ないんじゃ…」
「そうなのよねーっ! なんっかいも注意してんのに、ずーっと走ってんの! 怪我してもしらないっつーの!」
「生粋の陸上バカだ、あいつは」
「…」
あたしは、ジッと、走る風馬を見つめた。
病院では見たことがない表情。
真剣で、真っ直ぐな瞳──。
そんな瞳に、吸い込まれてしまいそうだった…。