私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
私は勢いよく春樹に抱きついた。


このままずっとイチャつきながら朝を迎えるのも悪くない。

そう思っていたときに、無粋にも携帯の着信が鳴った。


(もう、いいとこなのに)


発信先を見ることもなく、私はなにげなく通話ボタンを押した。

「はい」

『海野雪さんの携帯でよろしいですか』

いきなり本名を呼ばれたことで、悪い予感が胸にわいた。

「そうですけど、なにか」

『こちらオリエントプランと言いますが、いま現在お金に困っていることはありませんか?』


「え……」


こんなとき、人間だれしも答えに詰まる。

その沈黙を図星とみたのか、通話先の男は矢継ぎ早に話を進めだした。

『ただいま当社ではご新規様キャンペーンというのを行っておりまして、お利息10%でどなたにでも300万円までお貸ししております』

「はあ」

『失礼ですが海野さま、現在他社さまからどのくらいご融資を受けておられますか?』

「いえ、あの……」

『いまご都合悪いですか?』

「あ、はい」

曖昧な返事を返していると、春樹がいきなりその電話を奪った。
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