私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
(いいなあ……)

幸せを切り取って額に入れたような風景だ。私にもあんな幸せが訪れるのだろうか。


自分とその母親を重ねて、私は目を細める。

すると、ふいに子供の顔がこちらを向いた。長いまつげがピンと伸びた、将来は美人になりそうな女の子だ。

大きな曇りの無い瞳が私をじっと見つめている。その瞳の奥には、くったくのない好奇心が輝いていた。


「お嬢ちゃん、いくつなの?」


私は思わずそう聞いていた。

あら、と母親がちらりと振り返り、小さく会釈をして笑いかける。

「ほら真由ちゃん、いくつなの?」

そして母親に促された子供は、小さな指を必死にもぞもぞさせて、起用に中指と薬指を伸ばす。そして

「にさい」

と言うと、恥ずかしそうにはにかんで、母親の胸に顔をうずめた。


私が母親だったら、その子の頭をくしゃくしゃにして褒めてあげるところだ。

その母親の顔も笑顔で満たされていた。私もきっと同じような顔をしているだろう。互いに言葉はなかったが、笑いながらうなずき合っていると私の受け付け番号が掲示板に表示された。

「じゃあ、失礼します」

そう言ってつかの間の温もりに背を向けると、指定されたカウンターへと向かった。


< 173 / 203 >

この作品をシェア

pagetop