私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
葬式は質素なものだった。近くの葬祭場に集まったのは、私の会社関係の上司。そして母が勤めていたパート先の社長と、数人のパート仲間。
近所の付き合いはほとんどなかったので、町内の人間はわずか3人しかいなかった。
親戚中の反対を押し切って父と駆け落ちしてきた母は、親戚との縁すら切っている。もちろん私は、親戚の人間の名前すら、誰一人として知らない。
このとき、私は天涯孤独になってしまったことに気がついた。
母の眠る顔は冷たく固いままだ。
それを見るたびに、心のうちに冷えた不安が広がってゆく。なにか思い残すことがあるのだろうかと。
その不安は的中した。
「あの……こんな時に言いにくいんですけどね」
声をひそめて話しかけてきた中年女性は、同じパートで働く同僚だ。焼香を終えると、その足で私のもとへと近づいてきた。
「あなたのお母さんにお金を貸してたのよ。どうにかならないかしら」
一瞬声が出なかった。そんなにお金に困っていたつもりはない。
「小さなお金ならアレだけど、ちょっと私も困ってたんだけど……」
「幾らですか……母は、いくらお借りしてたんですか」