私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
中村はふんぞり返ったまま、また人を食ったような言葉を吐いた。


「離職票って、この現場を辞めるだけで、日興ワークにはまだ登録してるんだから、そんなの無理だよ」

「どういうことですか。クビになったんでしょ。こっちも雇用保険もらわないといけないんですから」

「だからな、クビってわけじゃなくて、この現場で働くことを辞めるってだけ。日興ワークはまだ辞めてないの」

「じゃあ、日興ワークを辞めます」


こんな会社、死んでも二度と来たくない。


「じゃあ自己都合退社な」

「冗談でしょ」

「冗談でしょって、そりゃこっちのセリフだっつーの」


もう怒りが爆発寸前だ。こっちは言われたとおりの現場に行って、言われた通りに働いていた。

それを、こいつが欲望を満たせないという理由で、勝手に仕事を取り上げておいて、さらに会社都合の退社も許さないという。


「ふざけんな、テメエ!」


私は思わず中村の座っている椅子を蹴り上げた。

ふんぞり返っていた中村は、泡をくって床にひっくり返り、目をまん丸に見開いたまま言葉を失っている。


「人を馬鹿にすんのもいい加減にしろよ!」


どうしてこいつらは、私たちを人間として見てくれないんだろう。

どうしてこいつらは、私たちを金儲けの道具としか見ないんだろう。


私だって、生きているんだ。



派遣社員には、人間らしく生きる権利もないのだろうか──
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