私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
やがて相沢の欲望が私の女を蹂躙しつくすと、打ち捨てられたようにベッドに横たわる私の顔に、貼り付けるようにして二枚のお札が叩きつけられた。

「俺の優しさに感謝しろよ」

相沢はにやつきながら、ベルトのバックルを鳴らして服を着る。

これで自らの行為を正当化しようとしているのだろうか。

私は、男に身を投げ打ってお金をもらう趣味はない。

見下されたことで、思わず相沢を睨みつけていた。

「おいおい、そんな目をするんならよ、その金を俺につき返してからやれよ」

そう言われてさらに血が上った私は、二枚の一万円札を握りしめた。

(言われなくても)

もちろん投げつけてやるつもりだ。

が、その手は怒りに震えたまま動かなかった。

「どうした、やってみろよ」

不意に涙がこぼれた。

情けない。自分がどうしようもなく情けない。

このお金をつき返せないのだ。


私のプライドよりも、このお金のほうが重い。それが現実だった。
< 63 / 203 >

この作品をシェア

pagetop