私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
「ふん、自分をもっと思い知るんだな。ここの宿泊費はすませてある。冷蔵庫のモンを飲まなきゃそのままチェックアウトできるからな」

相沢はそう言うなり、部屋を出て行った。



静まり返った部屋には、エアコンだけが低く唸りをあげている。

肩に巻かれた包帯は真っ赤に染まり、傷口が開いたことをしめしていた。

「痛いよ」


誰にも聞こえることのない独り言をつぶやくと、私はベッドに突っ伏して心を閉ざす。

憤りと屈辱と、穢された悔しさから逃れるために。


肩とお腹が痛かった。



翌朝、ボロボロの体を引きずってチェックアウトする。

大切なものを喪った。その代償として手にしたものが、果たして今の私にとって安いのか、それとも、高いのか。

ただ喪失感だけを身にまとい、うつろな目で、ビルの隙間からのぞく空を見上げた。


警察に相談して被害届を出そうかとも思ったが、訴えたところで、弁護士や警察、裁判所の手続きに手間をとられている間に、私は飢え死にしてしまうだろう。


訴えるだけの経済力すら、いまの私には残されていないのだ。
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