私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
肉屋の前を通りかかったときだ。カウンターの中から声を掛けられた。

「お嬢さん、コロッケ安くしとくから買っていきなよ」

そう言われてみれば、ひどく空腹だったことに気づく。

値段を見ると、一個80円だった。

(高いなあ……)

たった80円と他人は笑うだろう。

メガネを掛けた初老の店主は、ぼう然とコロッケを眺める私に何か感じたのだろうか、もうひと声、掛けてきた。

「ちょっとこっちおいで」

私は言われるがままに、その肉屋の店頭まで足を運んでいた。

「どうせもうすぐ店じまいだからさ、サービスしとくよ。一個10円だ」

10円なら買いだ。

「そんな、良いんですか」

「ああ、俺はさ、可愛い女の子にはサービスしちゃうのよ」

「おじさん、上手ですね」

久しぶりに女の子なんて言われた気がする。落ち込んでいた心が、ふっと軽くなった気がした。

「上手ってのはコロッケを食べてから言いなって。すんげえ美味いから」

「そうなんですか。じゃあ一個ください」

「はいよ、毎度あり」

そういうと、店主は紙袋にコロッケを詰め込みだした。

しかし、注文したのは一個だったはずだ。
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