私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
私はとっさに財布をとりだして、中身の二万円をとりだした。

財布が手元からすべり落ち、小銭がロビーにちらばる。慌ててそれをかき集める私を見ながら、看護師は

「まあ、いいでしょ」

と言い捨てた。



とにかく、診療は受けられた。診察をしてくれたのが女性の医師だったのは、本当に幸運だったとしか言いようがない。

「大丈夫、子宮の入り口が傷ついてるだけです。お子さんは健康ですよ」

その医師は、エコー写真を差し出してそう言った。

たまっていた黒い不安とともに、私は大きく息を吐き出す。そして、ようやく自分の肺に空気が満たされる感覚を味わった。

「感染症が少し心配なので、お薬を出しておきますね」

「ありがとうございます」

これほど医者に感謝したことはない。

実際には子宮を調べてエコー検査をしただけなのだが、それでも子供が無事だったことを告げられただけで、感謝の念がこみ上げた。

「それよりも、海野さん」

名前を呼ばれて、下げていた頭をあげた。

「健康保険には必ず入ってください。これから困りますよ」

確かに困る。しかし現状は、その日を食っていくのが精一杯なのだ。
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