私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
(どこ……ここ?)


ふだんなら、横を向けば見慣れた化粧品を入れたかごがあるはずだ。

しかし、そこには雑に放り出された文庫本が散乱している。


(ええっ!)


跳ね起きた私は、つぎの瞬間、慌てて毛布を体に巻きつけた。


(ええーっ!)


背中が冷えた空気にさらされている。


私は裸だった。


(うそ、うそ……)


手を下半身に伸ばすが、そこもなにもまとってはいない。

足元に丸められた衣類の感触がある。それを手繰り寄せて広げると、私のショーツだった。


(うっそでしょ!)


昨夜の記憶をどんなにたぐっても、そんな行為をしてしまった記憶は無い。

どころか、この部屋に来た記憶すらない。


(どっち?)


とにかく、この状況から察するに、この部屋の住人は春樹か中川のどっちかでしかない。

しかし、どちらにしても、恋愛対象と見ているわけじゃなかった。


部屋を見渡してみると、奥に玄関のドアが見える。雑誌やCDなどが散らばった雑多な狭い部屋だ。

どうやらワンルームの部屋らしい。



私はショーツを穿いて、ブラジャーを着け、脱ぎ散らかした服を着た。

そして部屋を見て回った。
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