+Black Blood.
10
□ □ □
ミッションとして課せられた“殺人”の課題に応えるべく、無花果は裏口の静かな広場で神経を集中させていた。
(不審な音、妖しい動き、異臭。・・・・今ん所はねぇか。そうそう毎日侵入者が来るとは限らねぇしな)
つ、と身体中に装着した武器をひとつひとつ確かめる。
左太腿の銃、直ぐ下の弾、右脚の弾、両腕の携帯ナイフ、腰に巻いた銃、・・・・など、全身の至る所に隠し持っていた。
(奪われても大丈夫な様に、下着にナイフ)
と、胸の中の鞘に入ったナイフを撫でた。
(もうあんな屈辱が無いように・・・・。
いくら薬で酔ってたとは言え、武器を全て取られるとは油断しすぎた・・・)
この間に起こった仁叉との乱闘で、武具が無いと闘えない自分の無力さに絶望したのだ。
(もう御免だ)
『僕に逆らうの?』
ふ、と過去の記憶が過ぎる。
(きっと、俺は仁叉の言い成りには成り下がらない)
そうして、近くにあった壁に拳を振りかざした。
『いいか、お前は男だ』
(俺は、男じゃない。
別に驚きはしないが・・何と言うのか。)
そう仁叉に教えられてきた無花果にとって、女として生きていく事は唯一の反抗だった。
手首にべったりついた手形の痣を見て、少し驚く無花果。
まぁいいか。と再び仕事に集中する無花果。
_