+Black Blood.
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―――ミッション先会社にて。
「・・・・・え?無花果様が?」
丁度、ロビーの生け花を取り変えていたメイドが二度聞きをする。
「・・・・あぁ。音信不通」
「そ、それで未だ帰っていないんですか?」
「生きてんのかも不明」
ざ、と一気に青白くなった顔を見て、零が慌てた。
死なないか、と。
「は?え?国会軍事会ですか・・・?」
言葉すらも覚束無いようだ。
「・・・・・・あ、あぁ。」
(何でこのメイドだけはこんなに無花果を気遣うのか)
メイドが持っていた花瓶を落としそうになり、零が慌ててキャッチする。
「・・・そんなに無花果が気になるの?」
「えぇ、気になりますとも!」
全力で尋ねてきたメイドの迫力に一歩下がった零。
――たった今、ロビーで見かけた侵入者を発見した所だった。
気が付けばその侵入者は倒れており、代わりにいつも通りの無表情なメイドが生け花を取り替えていた。
「・・・あんさ、この侵入者って・・・」
「襲い掛かってきましたので、つい・・・」
ふふ、と可憐に微笑むその顔からは何も感じ取られない。
「・・・無花果様とは、実は初対面じゃないんですの」
「・・・・・・ハッ?!」
「でも、このお話は致しません。お仕事の邪魔をして申し訳ありませんでした。では」
愛想笑を浮かべたまま、取り替えた花瓶を片手に去っていく。
――花瓶に、血痕が見えたことは零も驚いた。